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サマーセミナー「市民健康講座」(since 1997)
<主催:大津医学生会・同OB会、後援:大津市・大津市医師会>

長澤 丘司

サマーセミナー「市民健康講座」のレクチャーから

血液細胞を造るしくみ
〜造血幹細胞のすみか(ニッチ)をつきとめ白血病に挑む〜

京都大学再生医科学研究所 生体システム制御学分野教授長澤 丘司たかし(OB会員・S62年卒)

1.血液細胞について

有名なiPS細胞は、全能性の幹細胞とも呼ばれ、1個の細胞から体のすべての細胞を造る能力がある人工的に造られた細胞です。それに対して、私たちの臓器には、組織幹細胞と呼ばれる幹細胞があり、 1個の細胞から特定の臓器やその部品である組織の細胞を形成し、生涯にわたり維持することができます。現在の再生医療ではiPS細胞だけでなく、組織幹細胞を利用することも注目されています。現在、すべての組織で幹細胞が発見されている訳ではありませんが、血液細胞の幹細胞は最初に発見された組織幹細胞で、造血幹細胞と呼ばれます。この細胞は、すべての血液細胞を生涯造り続けることができます。

血液細胞には大きく赤血球、白血球、血小板の3種類の細胞があります。赤血球は体に酸素を肺から取り込んで体のすみずみまで運ぶ役割があります。白血球は体に病原体が進入したときに、その病原体を排除する生体防御という役割があります。これは10数種類あります。血小板は血管が破れたときにその壁にふたをする役割があります(図1)。


図1 血液細胞の分化

血液の病気にはさまざまな種類があります。一番怖いのは、造血 幹細胞の遺伝子の変異が重なることで発症する白血病という血液のがんです。また、その他のがんについても化学療法や放射線療法によって、造血幹細胞が障害されてしまうという最大の副作用があります。白血球がやられると、普段問題にならない菌やウイルスで重篤な感染症になります。赤血球がやられると貧血になり組織の酸素が不足し、血小板がやられると、ちょっとした打撲でも出血が止まらないようになります。これらの病気を治療するためには、どのように血液細胞が維持され、作成され、保護されているかを知らないといけないのです。

骨は人体の中で最も強い強度をもっています。骨の中心部分は空洞になっており、そこは骨髄と呼ばれます。この骨に囲まれた骨髄の中に造血幹細胞が存在し、血液細胞が造られています。血液細胞は毎日死んでいきますので、毎日、新たに造られています。われわれは骨髄でどのように血液細胞が造られるかを研究しています。この骨髄の代わりになるように試験管の中で血液細胞を造る実験を世界中で行われてきましたが、誰も成功しませんでした。骨髄の中でどのように血液細胞が造られるかが判明すると、試験管の中で血液細胞を造ることができると思います。

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