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サマーセミナー「市民健康講座」(since 1997)
<主催:大津医学生会・同OB会、後援:大津市・大津市医師会>

3.CXCL12 abundant reticular cell

(以下、CAR細胞)

私たちは、以前にCXCL12というケモカインの一種であるタンパク質がないと造血幹細胞や白血球が減少することから、CXCL12は、骨髄で造血幹細胞を維持したり、白血球を造ることにとても重要な役割を果たしていることを世界ではじめて発見しました。次に私たちは、CXCL12というケモカインを他の細胞より著しく多く発現している細胞が骨髄の中に存在していることを発見しました。この細胞は細網細胞の一種で、造血幹細胞を維持しているニッチを構成しているのではないかと考え、CAR細胞と名付けました(図3)。CAR細胞が実際に骨髄で造血幹細胞と接着していることを証明し、発生工学技術を用いてCAR細胞を骨髄で欠損したマウスを作製すると、血液細胞は減少し、造血幹細胞の数が減り、分化が亢進することがわかりました。CAR細胞はCXCL12の他にstem cell factor(以下、SCF)という造血幹細胞を維持するのにとても重要なタンパク質を他の細胞より多く発現していることが分かりました。CAR細胞を欠損させたマウスでは、CXCL12とSCFが骨髄で著しく減少することがわかりました。これらのことからCAR細胞こそが骨髄で造血幹細胞を維持し、血液細胞を造っているということがわかりました。更に、CAR細胞はある培養条件にすると脂肪細胞に分化し、別の培養条件にすると骨芽細胞に分化することもわかりました。


図3 CAR細胞

ではCAR細胞はどのようにして体内で造られているのでしょうか。CAR細胞と骨芽細胞が発現している遺伝子の相違を探し、Foxc1と言われる遺伝子がCAR細胞のみに発現することが分かりました。Foxc1は転写因子で、様々なタンパク質を造れという指令を出します。Foxc1が先天性に欠損すると、水頭症や先天性緑内障という病気になります。発生工学技術を用いてマウスでCAR細胞を含む骨髄だけでFoxc1を欠損させると、造血幹細胞や血液細胞が著明に減少し、脂肪細胞が増加することがわかりました。したがって、CAR細胞は、Foxc1という転写因子を出すことで造血幹細胞を維持したり、血液細胞を造るのを助けることができるようになるということがわかりました。

このような研究が臨床にどのように応用できるかと、よく質問されます。哺乳動物の幹細胞ニッチの形成にどのような遺伝子が必要なのかは全く知られていませんでしたが、世界で初めてその遺伝子を発見しましたので、ニッチを調節する薬剤で、血液細胞の障害を治療したり、iPS細胞や皮膚の細胞からニッチを作り、これを用いて試験管内で血液細胞を造る研究に大いに役立つと考えられます。

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