サマーセミナー「市民健康講座」(since 1997)
<主催:大津医学生会・同OB会、後援:大津市・大津市医師会>
3.がんについての知識
三つ目は「がんについての知識」です。がんと向き合うには、がんという病気について知ることが必要不可欠です。がんは、正常な細胞内の核に含まれる「人体の設計図」とも考えられる遺伝情報に異常が起こり、がん細胞となり、増殖することが原因であると考えられています。ただし、これだけではがんという病変を見ているに過ぎず、がんを持った一人の患者を身体、心の両面から診療する全人的医療を実施するには、他にも、「心理学的」、「宗教学的」、「精神科的」など様々な観点から、「がん患者」というものを知る必要があります。

4.心のコントロール
四つ目は「心のコントロール」についてです。心の構成に関する考え方を少し紹介させていただきたいと思います。まず、中心に「本能」があり、それらを四つの要素が囲んでいます。まず、心の定義として、よく「知・情・意」が用いられます。これらは、知識・知恵・経験・知性をつかさどる「知」、感情・自制・思いやりをつかさどる「情」、意志・困難克服・気力をつかさどる「意」を意味しています。実際に患者の診療では、これに、信心・霊魂・自分らしさをつかさどる「魂」が加わります。「知・情・意・魂」は記憶の海の中に存在していますが、外部から五感を通してインプットされたものが、心の構成要素で咀嚼され、それに対する反応が何らかの行動としてアウトプットされます。
年をとると、身体機能は低下しますが、心や知恵は衰えることがありません。心のしくみを知り、足りない部分や異常な部分を認識し、心をコントロールすれば、がんのような人生の危機と向き合うことができるようになるでしょう。

(※当コンテンツの無断転載を禁じます)