サマーセミナー「市民健康講座」(since 1997)
<主催:大津医学生会・同OB会、後援:大津市・大津市医師会>
地域医療と患者の動向について調べましたので、報告いたします。
当院の外来を受診した、腰部脊柱管狭窄症患者を対象として、来院経路と手術適応率を調査し、当院の外来治療の現状を検討しました。2009年1月から12月までに腰椎関係疾患で当院を受診された方は2,494例でした。その内、腰部脊柱管狭窄症、または腰椎変性すべり症と診断したのがそれぞれ198例、54例でした。上記の中で手術に至った症例は40例で約16%でした。
来院経路、初診時の主訴、発症から初診までの期間、保存加療の内容、手術症例数および転帰について調査しました。来院経路は病診紹介が69例に留まり、紹介なしが138例に及びました。病診紹介の内訳は整形外科から58%、その他が42%という結果でした。初診時の主訴で最も多かったのが下肢痛や臀部痛で、126例でした。下肢のしびれのみも39例ありました。発症から初診までの期間と手術適応例の割合を表しています。発症初期は手術例が少なく、発症から時間が経過するにつれ、手術例の割合が増加しているのが分かります。来院経路と手術症例の関係を表しています。病病紹介が47%と最も高率に手術適応となりました。病診紹介は30%であり、紹介なしで直接来院された方では6%しか手術に至りませんでした。紹介状がある患者は手術を行った割合が優位に高いことが分かりました。よって、手術の必要がない患者の特徴としては、紹介状なしで初診される方、他科受診のついでに受診される方、発症からの経過が短い方、下肢しびれのみや下肢痛のみが主訴の方でした。
来院経路をシェーマで表します。現在は患者が直接病院を受診する経路が太くなっています。病院の本来の機能を高めるためには、病院の外来機能を縮小し、患者は診療所を受診し、病診連携をさらに高めていく必要があると思います。
腰部脊柱管狭窄症の治療についてお話いたします。本日は薬剤治療と手術療法についてお話します。薬剤治療としては、まずは、痛み止めや血のめぐりを良くする薬を用います。さらに、神経痛専門の痛み止めも近年では使用することができるようになりました。また、オピオイドと言われる麻薬も使用することが認められました。疼痛の強さに応じて通常の痛み止めから開始し、鎮痛効果が得られないときには、プレガバリンや三環系抗うつ薬を併用し、さらに疼痛が強い症例や慢性疼痛には麻薬を併用するという、新たな治療戦略を立てることが可能になりました。
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