サマーセミナー「市民健康講座」(since 1997)
<主催:大津医学生会・同OB会、後援:大津市・大津市医師会>
南極での研究
私自身は、越冬中を通じて、基地の衛生モニタリング以外に、雪試料のサンプリングや越冬隊員たちの健康・心理面での観察を評価しておりました。これは、帰国後に、欧文誌にまとめることができました。持ち帰った雪のサンプルに含まれる超微量元素をICP-MSという質量分析計を用いて測定し、物質の大気間移動などグローバルな物質循環について考察した論文が私の学位論文となりました1)。これは、間違いなく私が研究を志す大変大きなきっかけとなりました。
帰国後、10数年たって、南極での顔の研究に、続編が出ました。高齢者の医療・介護においては、突発的なイベント(急性心筋梗塞、脳梗塞等の発症や、喘息などの持病の急激な増悪等、精神的落ち込みによる衝動的な行動等)をいかに未然に防ぐかが、本人のQOL(Quality of Life:生活の質)にとって、周囲の人間にとっても、さらには医療経済全体にとってもきわめて重要であります。多くの臨床医は、長年にわたって付き合いのある患者であれば一目見ただけで、その日の体調や精神状態を的確に把握できる、と証言しています8)。南極で行った手法6)が、継続的に撮影された顔写真から臨床医が異常やイベントの徴候を察知できるか、顔の特徴を計量化できるか、在宅高齢者を対象とする健康管理に利用する際には、どのような利点と問題点があるか、などの顔情報から健康状態のモニタリングする研究の端緒となりました7)。
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