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滋賀県の地震防災対策

行政レベルではどのような対応が考えられているのだろうか?今回、私たちは身近にある滋賀県庁に伺い、地震対策室長青山 達先生に詳しくお話を伺った。

滋賀県での地震の危険性と地震に関する予備知識

まず知っておきたいことは、滋賀県には多数の断層があり、琵琶湖西岸だけでも9つを数えるということである。これらの断層は合わせて琵琶湖西岸断層帯といい、マキノから膳所断層まで59kmにわたって走っている。この琵琶湖西岸断層帯で地震が発生した場合、最大で何とマグニチュード7.8程度の規模になるといわれており、その場合、阪神・淡路大震災(マグニチュード7.3)に比べ、地震のエネルギーは5〜6倍ということになる。

琵琶湖西岸断層帯において、今後30年間に地震が発生する確率は9%といわれている。阪神・淡路大震災が起こったとき、その発生確率は8%といわれていたことから考えると、この数字は決して安心できるものではない。すぐにでも起こりうる地震、として準備をすることが必要である。

また、地震に関する予備知識として重要なことは、縦揺れと横揺れの時間差である。例えば、2004年9月5日、潮岬沖、地下38kmでマグニチュード4.3の地震が発生し、滋賀県では震度4が観測された。地震はまず縦揺れが来て、後れて横波が到達するが、この地震のときは、潮岬沖の串本で縦揺れを察知した後、滋賀県に横揺れが到達するまでの時間差が45秒あったのである。発生が危険視されて久しい東南海地震は地下10kmで起きるといわれており、地震発生から滋賀県に揺れが到達するまでに25秒の時間差が生じる。

地震発生の情報をいち早く一斉に県内の医療機関や学校、公共施設や企業など、またJRをはじめとする交通機関に伝えることができれば、25秒の間に何らかの対策を講じることができるかもしれない。わかりやすい例を挙げると、20秒あれば、時速270kmで走っている新幹線が、時速210kmまで減速することができるのである。時速210kmといえば、中越地震のとき新幹線が長岡市を走っていたのと同じ速度である。その新幹線は脱線したものの、乗客150人に怪我人はなかった。

地震防災プログラムの基本的な考え方 −県民・防災関係機関・市町村・県の役割分担−

地震に備え、対応するには県や市町村など行政だけの予防対策だけでは十分ではない。また、大規模な地震が発生した場合には、行政だけの防災能力だけでは、とても対応できない。このため、地震の予防対策や被災後の応急対策は、県民、事業者、防災関係機関と行政が連携し、それぞれの役割を明確にして進めることが大切であると言える。

具体的には、県民や事業者は、「自らの命や財産は自ら守る」という考え方に基づいて以下のような事を行うことが必要である。

  • 地震や防災に対する知識を習得し、「正しく恐れる」こと
  • 住宅、事業所、社宅等の耐震化や家具等の固定、諸機能の分散などの予防対策
  • 消火器等の準備、地域の危険度や避難経路、避難場所の把握
  • 食糧、飲料水の備蓄、非常持ち出し品の準備(被災後の生活に対する備え)など

このほか、県民や事業者は、「自らの地域を守る」ため、地域の自主防災組織等が行う活動に積極的に参加するなど、被災時の地域の防災活動への協力体制を確立し、行政やボランティア等と連携して、地域防災力の向上を図ることが大切である。

次に防災関係機関についてだが、地域防災計画に定められた所轄する分野の対策を、特に率先して行うとともに、県・市町村や防災関連機関相互と連携を図りながら、総合的に地震防災対策を進めることが必要である。これに関しては先の国立病院機構災害医療センターについての記事で詳しく触れている。

また、市町村は住民にもっとも身近で基礎的な地方公共団体であり、区域内の住民の生命、身体および財産を守り、安全を確保するための第一義的責任を有するものとして、以下のようなことを行う必要がある。

  • 防災のための知識の普及、意識の啓発、必要な情報の提供と周知
  • 住民の自主防災組織の育成指導
  • 避難地、避難路など防災施設の準備
  • 自ら所有する施設等の耐震化や整備
  • 食糧・生活必需品の公的備蓄

特に、第一防災圏である自治会や町内会等で担う自主的な防災活動を支援し、自主防災組織の育成と活性化に努めることは、地域防災向上のために、市町村の大切な役割である。

県は、広域的地方公共団体として、県民の生命と財産を守るため、県域全体の地震防災対策を国や市町村、各都道府県や防災関係機関と連携して、総合的かつ計画的に推進する。

  • 国との調整、各都道府県との広域連携、県内市町村や防災関係機関との調整
  • 国等と連携して行う地震に関する調査研究
  • 自らが所有する施設等の耐震化や整備
  • 他の実施主体と一体となって進める事業への支援や助言等
  • 食糧、生活必需品、医薬品等の公的備蓄

また、地震防災対策を進める上で必要な法整備や法改正、制度の創設や改定、延長等について、他の都道府県とも連携しながら、県として国に対する政策提言や要望を行うことももちろん重要である。

地震防災対策プログラムにおける県の役割

県はこのプログラムにおいて、前記の役割分担を踏まえて、緊急度や重要性の観点から、自らが行うべき対策のほか、他の実施主体が行うものへの支援や助言等を行い、地震防災対策を進めていかなければならない。

県が直接行う対策としては、自身の被害想定調査を早急に実施すること、また県有施設の耐震化などの計画的な推進や、県民に対する意識啓発の実施などが挙げられる。

また、他の実施主体が行う対策を「支援」することも重要であるが、その具体的な項目としては、病院・社会福祉施設(国公立を除く)の耐震診断の支援、個人木造住宅の耐震診断・改修への支援、自主防災組織の資機材整備に対する支援などがある。

他には、小中学校や公共施設の耐震化に対する助言、公立の病院や社会福祉施設の耐震診断に対する助言、ライフライン施設や危険物施設の耐震化対策の啓発 等、他の実施主体が行う対策に「助言等」を行うことも重要である。

ここで述べたのは、地震防災対策プログラムの基本的な考え方であり、より詳しい内容はhttp://www.pref.shiga.jp/c/jishin/program/を参照されたい。

実際に地震が起こったら

▼ライフラインの復旧

最後に、実際に地震が起こった際に具体的にどうなるか、どうすべきかについて触れる。まず、地上を走る電話回線や電気は比較的早く復旧するが、地下を走る上・下水道、都市ガスは復旧に時間がかかることを認識すべきである。3つのうち、一番初めに復旧するのは下水道で、次は上水道、最後にガスである。ガスよりも先に水道が復旧するのは、上水道を先に修復しないと、ガス管に水が入ってしまうからである。特に注意しなければならないのは団地などで、これらはLPガスを集中配管しているところがあり、その場合、ガス管に損傷がないかひとつずつあたっていかなければならず、大きく時間がかかるのである。これもまた、ガスの復旧が遅れる要因のひとつである。

▼県の情報収集

意外に思うかもしれないが、情報収集において国や県はNHKに勝てない。情報収集に対する姿勢が根本的に違うからである。NHKは市町村の職員に直接電話をいれて情報を得て、さらにその一回だけの情報を報道するのではなく、同様の電話を3人ほどがかけて、それらを重ね合わせたデータを報道している。県は市町村の職員からパソコンやファックスで情報があがってくるのを待ち、国は県からの報告を待つ。市町村の職員は現地の状況把握や対応に追われ、県への報告は二の次になる。今後は県から市町村に積極的に連絡を取り、情報収集に当たることが必要であろう。

今回の取材は地震対策についてのみとなってしまったが、地震対策のために各県が様々な対策を練り、推進していることが分かり頼もしく感じた。しかし、それ以上に驚きだった、というか危機感を感じたのが、医学生である我々がこうした地震の知識に関して全くの無知であり、さらに言えば大きな関心を示していなかったことである。例えば、冒頭で触れた縦揺れと横揺れの時間差なども、「それがある」と認識してさえいればこの時間差内に、医学生として適切な行動が取れるのではないだろうか。先の国立病院機構災害医療センターについての記事のまとめとも、またこの記事の中の県民や事業者に求められる対策とも関連するが、やはりこうした知識を各機関で教育していくことが、被害を抑える第一歩として重要であると感じた。

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