![]() |
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
![]() 大津医学生会TOP > 活動報告 > 特集 > 大規模災害を見据えて 大規模災害を見据えて
|
![]() |
各地域において、防災の主要な役割を担っているのは災害拠点病院である。国立病院機構災害医療センターもそのひとつであるが、次に、滋賀県を代表する災害拠点病院、大津赤十字病院を訪問し、医療社会事業部社会課社会係長である辻 多鶴子さんにお話を伺った。
大津赤十字病院は平成9年より滋賀県から基幹災害医療センターに指定されており、補助金が支給されている。つまり、赤十字病院の機能とともに滋賀県基幹災害医療センターの役割を担うことになる。ここには現在870床の病棟があるが、災害時には3700人の患者さんの受け入れ(要入院400人)を想定している。また、災害時の基本装備として自家発電装置を有しており、停電から4分以内に自家発電に切り替わる仕組みになっている。
▼病院玄関
玄関を入ってすぐのところには広い待合フロアとなっており、災害時に臨時患者を受け入れるために広くしてある。実際の現場ではまず、外来玄関に入るまでのエリア(玄関前駐車場など)でトリアージを行い、外に設置されるテントを軽症ゾーン(緑色)とする。病院があるのにわざわざ外で患者を扱うことに意外に思うかもしれないが、これは災害時には患者数が多いためだけでなく、軽症の患者さんは声を出して症状を訴えることができ、病院内はなるべく静かな状態に保ちたいという点も考慮されている。中程度以上の症状の患者さんは、病院内に案内し、組み立て式のベッドに寝かされ、待合フロア付近で手当てを行う。特に重症患者さんは検査室へ行きやすいようにストレッチャーつきのベッドに寝かされ、奥のほうに運ばれる。ちなみに、2階では経過観察を行うことになっている。
▼災害用備蓄倉庫
これは地下1階にある施設で、やはり耐震構造である。広さは585?とのことだが、実感としては想像していたよりもずっと広く感じる。倉庫内には数多くの物品が備蓄されており、それぞれの棚ごとに看護科、栄養科、施設科など、管理者を明確にしている。ここでは大きく分けて6種類の物品を取材させていただいた。
▼受水槽
ここには5日〜1週間分の水に相当する400トンの水を備蓄してある。もともと地下水が湧き出ていたため、それも利用しているのだが、基本的にこの水は雑水であり、常時、病棟内を循環している。災害時には、この受水槽に塩素を入れ、消毒処理などをして飲み水とすることも可能である。
大津赤十字病院の職員は、災害は必ず来ると思っている。特に琵琶湖西岸断層による地震は、高い確率で起こると考え、装備の充実と訓練に励んでおり、具体的には、トリアージ訓練や、救護班の勉強会などを行っているほか、地域で行われる防災訓練にも参加している。しかしながら、大津日赤にはすぐ裏手に山があるため、ヘリポートがつくれないのが一番の問題点であるため、大津地域で災害が起こった場合には、なぎさ公園と皇子山運動公園がヘリポートとなり、そこから陸路を使った搬送という形になる。大津市民病院にはヘリポートが完備されている。
今回取材させていただいた辻さんが実際に災害時の応援に行った際、一番にやったことはトイレ掃除だったという。災害地に派遣される医療従事者らは「自己完結型」をモットーとしており、医療だけでなくこうした日常的な作業も自分達でやっていかなければならない。日本赤十字社では、第一次召集メンバーとして、災害地から2km以内の日赤関係者を派遣することになっているが、世界中に国際赤十字(イスラム圏では赤新月)があり、日本赤十字社も、国内のみならず、海外の災害時にも医療チームを派遣している。したがって連携をとるためにもコミュニケーション能力は非常に重要であり、やはり、国際医療の場では語学がポイントとなる。
また、近年起きた、新潟県の中越地震で問題となったが、災害時には心のケアもまた重要であり、心のケア指導要員も今後は積極的に災害地に派遣される。今回の中越地震を見ていると、日本の災害医療も、災害直時の被害に対する対応は整ってきたように感じるが、今後はこうした被災者の心のケアなど、災害事後の計画を組み入れたものが重要となっていると思う。
Copyright(C)2006 Otsu Medical Students Association All Right Reserved. |