- 少子化の現状
従来は約20年ごとにベビーブームが到来していた。しかし平成7年前後に予想されていた第三次ベビーブームの到来はなく、少子化が促進された。現在国民の4人に1人が高齢者となり、年金・医療費問題が発生している。また、小学校では一学年のクラスの数も4つから2つへ縮小化が進んでいる。
- 主要先進国の出生率の推移
豊かさと合計特殊出生率は反比例する。日本はそのような国のひとつである。例外として、アメリカは移民等の受け入れが多いので、先進国としては高い数字を保っている。
- これまでの少子化対策
働く女性を支援するために保育所を増やしたり、育児休業制度を充実、育児休業期間中に支払われる給付水準を改善した。育児休業制度導入時は給付なしだったが、平成7年度には25%、平成13年度には40%と増加させた。
- 新エンゼルプランで掲げた事業の進捗状況
保育所受入れ児童数については、平成14年度から「待機児童ゼロ作戦」により、上積みして拡大している。他には、延長保育や放課後児童クラブ・病後児保育の推進、地域子育て支援センター数の増加にも重点が置かれている。
- 出生率低下の社会的背景
- 働き方の見直しに関する取り組みが進んでいない
子育て期にある30歳代男性の4人に1人は週60時間以上就業していて、子供と向き合う時間が奪われてしまっている。また、職場の雰囲気から育児休業制度を十分に活用できないことなどが原因のひとつである。
- 子育て支援サービスがどこでも十分に行き渡っている状況にはなっていない
核家族の増加により子育てにおける親族からの支援が減少し、地域共同体の機能が失われていく中、身近な地域に相談できる相手がいないなど、在宅で育児を行う家庭の子育ての負担感が増大していることなどが原因である。
- 若者が社会的に自立することが難しい社会経済状況
雇用の不安定な若者は、社会的、経済的に自立できず、家庭を築くことが難しいことが最大の原因である。
- 育児休業を利用しなかった理由
職場の雰囲気が気になることや、収入が減ることにより経済的に苦しくなることが多く挙げられている。他には、保育所に預けることができた、仕事に早く復帰したかった、などが挙げられている。制度が十分に活用されるためには、職場優先の風潮、長時間労働環境の見直しが必要である。
- 次世代育成支援対策の推進
次世代育成支援対策推進法の成立により、地方公共団体や企業等における行動計画の策定、行動計画策定指針の策定、地方公共団体におけるニーズ調査が実施された。平成16年末には「子ども・子育て応援プラン」が策定され、具体的に少子化社会に対する対策の実施計画が立てられた。
- 少子化社会対策大綱
少子化対策基本法を元に、平成16年度6月少子化の流れを変えるための総合的な施策展開として少子化対策大綱を策定した。これは若者の自立心を高め、子育ての不安や負担を軽減し、子育ての新たな支え合いや連帯を生むという3つの視点から成り立っている。ここでは、以下の4つの重点課題が挙げられている。
- 若者の自立とたくましい子供の育ち
- 仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し
- 生命の大切さ、課程の役割等についての理解
- 子育ての新たな支え合いと連帯
これらの課題に取り組むために、具体的に28の行動内容が策定されている。
- 「子供・子育て応援プラン」のねらい
少子化社会対策大綱の掲げる4つの重点課題に沿って、平成21年度までの5年間に講ずる具体的な施策内容と目標を提示したものである。また、プランの実施を通じて、「子供が健康に育つ社会」「子供を生み、育てることに喜びを感じることのできる社会」への転換がどのように進んでいるのか分かるよう、約10年後を展望とした「目指すべき社会の姿」を提示している。さらには、全国の市町村が策定中の次世代育成支援に関する行動計画も踏まえて目標設定することにより、全国の市町村における行動計画の推進を支援している。
- 「子供・子育て応援プラン」の概要
先に示した4つの重点課題に対して、以下のように対応している。
- 若者の自立とたくましい子供の育ち
若者の自立を促すために若年者使用雇用の積極的活用と日本学生支援機構奨学金事業を充実、また、学校における体験活動を充実させ、若者がさまざまな体験をして教育を受け、意欲を持って就業し、経済的にも自立できる社会にする。
- 仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し
個々人の生活等に配慮した労働時間の設定に改善に向け、長時間にわたる時間外労働を是正するなど企業に働きかけ、男性でも家庭でしっかり子供に向き合える時間が取れたり、希望するものすべてが安心して育児休業などを取得できるようにする。
- 生命の大切さ、課程の役割等についての理解
保育所、保健センターなどで中高生が乳幼児と触れ合う機会を提供したり、全国の中・高等学校において子育て理解教育を推進して、多くの若者が子育てに肯定的なイメージを持てるようにする。
- 子育ての新たな支え合いと連帯
地域の子育て支援の拠点をつくり、児童虐待防止ネットワークの設置、小児救急医療体制の推進、ハイリスク患者対応の周産期医療体制の整備などを行う。全国どこでも歩いていける場所で気兼ねなく親子で集まって相談や交流ができるようにしたり、いつでも安心して母子医療が受けられる体制を整えるようにする。
- 児童・家族の社会保障給付
我が国の社会保障給付は、高齢者関係給付の比重が高く、児童・家族関係給付の比重が低くなっている。したがって、子供のための費用や児童扶養手当の増加が必要ではあるが、費用の捻出が困難となっている。
- 社会保障の中での次世代育成支援
児童・家族関係給付の比重が低く、高齢者関係給付の比重が高い現在の社会保障を見直すべきとの指摘がなされている。そのために、「少子化社会対策大綱」、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」、「今後の社会保障改革の方向性に関する意見」の3つの柱の元で、高齢者世代の理解を得ながら「高齢」関係給付の伸びをある程度抑制し、社会保障の枠にとらわれることなく支援の推進を図っていくことが望まれている。