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大津医学生会TOP > 活動報告 > サマーセミナー2005 > 講演2 超音波でこんなことがわかる ーがんの早期診断を中心にー大阪府立成人病センター検診部長兼超音波検査室長 画像診断とは
超音波とは音波というものは空気の疎な部分と密な部分の繰り返しで、それが連続した波となっている。人間が聞き取れる音よりも波長が短い(従って周波数が高い)音波を超音波と呼んでいる。診断用超音波の波長は1mmの10分の1程度であるが、波長が短いほど分解能の高い詳細な画像となるが、反面散乱しやすく深部まで届きにくい。超音波は臓器や組織中では水中を伝わるように進んでいくが、音波の伝わり方の異なる部分があると、その境界で反射する。空気や骨との境界部では強烈に反射する。 実際の診断装置では、機器の本体から送られてきた電気信号はプローブで超音波に変換され体内に送信される。体内の各所では屈折、散乱し、熱吸収なども起こるが、色々な経路を経て反射し、戻ってきた音波をプローブで受診する。これを再び電気信号に変換して処理し、画像にする。強力な超音波は尿路結石の破壊や前立腺癌などの治療にも用いられるが、診断用の超音波は人体に影響が及ばず妊娠中の胎児の診断にも使用できるのが長所である。 超音波検査で身体の何がわかるのかまず、臓器の変形や構造の不規則性がわかる。例えば肝臓は小葉構造と周囲の組織や血管からなるが、肝硬変になると小葉の間の繊維が増え硬くなる。また腫瘍ができると小葉構造を破壊して進展するので構造が不規則になり、いびつになってくる。超音波でこれらの構造の異常から疾患や状態を診断することが可能である。 次に超音波を用いて血流情報も知ることができる。反射源が近づいてくるときには周波数が高く、遠ざかる時には周波数が低く変移するというドプラ効果を利用して血流情報が得られる。血流を認める部分を色表示したり、血流の流速を計測したりすることが可能である。血流の表示により、超音波で表示された腫瘍が血流の多い腫瘍か少ない腫瘍かが判断できる。例えば、新生血管を伸ばし自身を栄養させる血流量の多い癌に分類される肝細胞癌は豊富な腫瘍血管がカラフルに表示され、もとあった血管を侵食しながら拡大していくため、血流量の少ない癌に分類される胆管細胞癌とは明瞭に区別することができる。これらの違いはその後の検査や治療方針に関わるものである。 さらに、最近は微小気泡からなる超音波造影剤を用いた血流画像診断も可能となり、造影CTに匹敵する血流画像診断が可能となっている。現在日本で認可されている超音波用造影剤はガラクト−スを主成分とした空気の微小気泡である。音波が泡にあたると気泡が共鳴して振動したり、崩壊するため送信した音波とは異なった周波数の音波が返って来る。これを画像化することで造影を行う。造影後は空気は呼気として排出され、ガラクトースは本来体内に存在するものなので副作用は殆ど認められていない。 また、超音波で腫瘍の弾性を診断情報としても画像表示できるようにもなってきた。振動を加えたときに起こる歪みの程度から硬さを読取るのである。一般に癌は硬いことが多いので、柔らかいと良性腫瘍の可能性が高いというように診断する。また、最近はコンピューターグラフィックスで3次元表示や4次元表示が容易となってきたので、断面像のみでなく第三者にも理解しやすい立体画像も利用されている。 おわりに以上のように、超音波は現代の医療に大変貢献している。あらためて超音波の長所をまとめると、苦痛がない、副作用がない、装置が簡便で持ち運びも可能である、造影剤なしでも診断可能である、リアルタイムな画像が得られる、スキルによってはCTやMRIより詳細な画像を映し出すことが出来る、ということである。さらに、最近話題になっているレントゲンCTの頻用による放射線被爆量の問題も超音波では気にかける必要がない。これが最大の利点であろう。 また短所を述べると、空気や骨では強烈な反射が起こりその後ろの部分を画像化しにくい、任意の場所は詳細に調べられるが全体は捉えづらい、検査を行う者のスキルや知識が要求されることである。 これらの長所と短所をしっかり踏まえた上で、人に優しい超音波を優しく活用し、副作用の少ないよりよい医療を行いたい。 |
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